人を呼ぶことと、まちをつくること。
「アーティスト・イン・レジデンス」という言葉を耳にして、調べてみた。移住じゃなくていい——関わってくれる人がどれだけ増えるかが、地方のまちづくりの本質じゃないかと思った話。
「アーティスト・イン・レジデンス」という言葉を耳にした。
なんとなく知っていたけど、ちゃんとは知らなかった。調べてみたら、思っていたより面白かった。
アーティスト・イン・レジデンスとは
読んで字のごとく、「アーティストが住み込む」仕組みだ。
国内外のアーティストを一定期間、地域に招いて滞在してもらいながら、創作活動を支援する。観光客として来てもらうわけじゃない。でも移住させるわけでもない。
その土地に一定期間、根を張りながら何かを作る。
そのプロセス自体が、地域に何かを残していく。
徳島県・神山町の話
調べていて一番面白かったのが、徳島県の神山町だ。
人口5,000人ちょっと。高齢化率は約50%。数字だけ見ると、地方の典型的な過疎の町に見える。
でもこの町、いま全国から注目されている。
1999年から続く「神山アーティスト・イン・レジデンス(KAIR)」がその出発点で、毎年秋、国内外から数名のアーティストが約2ヶ月間滞在して作品を制作する。地域住民と一緒に、その土地の素材や風景を使いながら。
面白いのはその波及効果だ。
アーティストたちが「この町、面白い」と発信するうちに、IT企業のサテライトオフィスが集まり始めた。現在、複数の企業が神山町に拠点を構えている。「創造的過疎」という言葉も生まれた——人口を増やすのではなく、関わる人の質と多様性を高めることでまちを豊かにする発想だ。
北海道・胆振でも
北海道でも、胆振地域(室蘭・登別・伊達などが含まれる地域)でアーティスト・イン・レジデンスの取り組みがある。
アーティストの視点でその土地を見て、作品に落とし込む。その記録が地域の外へ発信されていく。
「自分たちでは見えていなかった魅力」がアーティストの目を通して可視化される——それが、住んでいる人間の自己肯定感みたいなものにもつながると思う。
移住じゃなくていい、という発見
調べていて気づいたのは、どの事例でも「移住させること」を目的にしていないということだ。
2ヶ月、滞在してもらえればいい。作品を作ってもらえればいい。そしてその人が帰ってからも、「あの町にいたことがある」という記憶を持ち続けてもらえればいい。
移住じゃなくていい。関わってくれる人がどれだけ増えるか、だ。
これを「関係人口」という。観光客よりも深く、移住者よりも気軽に、その土地と継続的に関わる人たち。アーティスト・イン・レジデンスは、その関係人口を意図的に作り出す仕組みとして機能している。
ゲストハウスも、同じ文脈にある
私が広尾町音調津に「日靜(にっせい)」を作ったのも、突き詰めると似た話だと思っている。
一棟貸しで、1〜数泊、静かに過ごしてもらう。KOBU SAUNAで整えて、昆布浜を眺めて、音調津の時間を体験してもらう。
それだけでいい。
一泊でも過ごした場所は、「知っている場所」になる。地図の点じゃなくて、体の記憶に刻まれた場所になる。そうなった人は、何かのきっかけでまた戻ってきたり、誰かに話してくれたりする。
ゲストハウスも、関係人口を育てる場所だと思っている。
じゃあ、広尾でアーティスト・イン・レジデンスはできるか
調べながら、ずっとそれを考えていた。
音調津の景色、昆布の浜、太平洋に面した静けさ——この環境は、アーティストにとって普通に面白い場所だと思う。日常から切り離された時間と空間がある。
課題は、受け入れる側の仕組みだ。滞在場所、活動費、地域住民との接点をどう設計するか。神山や城崎には、それを設計した人たちがいた。
まだ答えは出ていないけれど、やれることはあると思っている。
ひとまず日靜は、その「入口」になれる場所のひとつだと考えている。
泊まりに来てくれる人が、この町に何かを感じて帰っていく。
それを積み重ねていくことが、まちづくりになると思っている。
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